« ちょっと息抜き!猫カフェ・レポ | トップページ | 近況ー忙しい3月に思うこと »

2013年2月27日 (水)

「別れる力」は大人の流儀か

1月に「レ・ミゼラブル」の映画を見に行った時、開演までの隙間時間に読もうと持ち出した伊集院静氏の「別れる力」。200ページ未満のボリュームなので、隙間時間に読めるかなと積ん読本の中から選んだ本です。

前回の「大人の流儀」 (今回もサブタイトルに同じく「大人の流儀」) に大きな感銘を受けた訳ではないのですが、「あの美しい夏目雅子さんが愛した人」をもっと知りたいという、非常にミーハー的動機があったことは、否めません。

結局、当日は、前書きにある、サラブレッドの仔馬が母馬と別れ、一晩、母親を呼んで哀切に満ちた声でいなないていたのに、翌朝は他の競走馬たちと懸命に駆け始めた、というくだりで涙がこぼれ始めて、最後まで読めませんでした。

もの悲しくも、美しい情景。「憂鬱」や「薔薇」の漢字がすらすら書ける (雅子さんが、記者会見で、どこが好きかと聞かれて答えていた) という、伊集院氏の「別れる力」とは。



 無頼派の伊集院氏は、頑固で繊細、彼独特の美学がありながら、思っていたようなカッコ良い人ではありません。「親の死に目にも会えないような」筋を通した仕事をするのかと思えば、雅子さんの闘病中には仕事を休んで付き添い、死別の後は酒・ギャンブルに溺れた無気力な生活を送ります。でも、そんな不器用な一面も、彼の才能を信じていた雅子さんには、愛おしい存在だったのでしょう。

彼がこの本を執筆した背景には、2011年の大震災があります。理不尽な別れが、ただ人を不幸にするだけのものではなく、「別れは生きた証し」でもあるのだと書いてあります。

最初は、悲哀の中から人は歩き出す力が備わっているという彼の説に、少しばかり反発を覚えました。

震災で家族を亡くした人の中には、自分が生きていくことを「恥ずかしながら生き永らえていく」と考えている方もいます。また、人の精神には個人のキャパがあり、ちょっとした失恋でも、精神のバランスを崩して生きる望みを失ったり、また元々「希死念慮」を持つ人だっています。「別れても」また歩き出す力と尊厳が全ての人間に同じように平等に与えられているのでしょうか。

別れても、救ってくれるのは、自らの再生力ではなくて、結局「人」ではないかと思うのです。よく読むと、「生きるとは、自分のためにだけ生きないこと」「誰かのために何ができるか考えること」とありました。少し、この他者との関わりについての箇所が、最初の読後感で強く印象に残らなかったのが、残念です!

私的には、ずっと前の作品ですが、五木寛之氏の「大河の一滴」の方が論理的には分かりやすく、「別れ」から「再び歩き出す」原動力の理解を得ることができました。

プラス思考がもてはやされる昨今ですが、五木氏は「安易なプラス思考」を排する姿勢をとっていて、「人はすべて地獄に生まれてくる」と言います。

そして、「その地獄のなかで、私達はときとして思いがけない小さな喜びや、友情や、見知らぬ人の善意や、奇跡のような愛に出会うことがある」とあります。

そう、伊集院氏の言う「自分のためにだけ生きないこと」にも関連するのですが、別れの後の絶望の中で、自ら備わった生きる力だけでは前には進めないでしょう。

世界が輝いて見える瞬間には、必ず誰かの手が差し出されていたり、善意に出会っていたり、愛に溢れた言葉を投げかけられていたはず。

こんな出会いがなければ、「別れる力」も生まれてこないでしょう。

「人」と別れて「人」に救われる。でも、そんな瞬間に恵まれる人ばかりじゃありませんね。「別れ」に「生きる力と尊厳」が備わるには、自分も「人に愛を持つこと」。「愛」を持って初めて、受け取った「愛」に感謝できる出発点に立てるのかもしれません。

伊集院静氏も、妻との死別後、アルコール依存・ギャンブルに溺れていた時、作家にしてギャンブルの神様である色川武大氏との交流によって再生を果たしたはず。その時の自伝的小説「いねむり先生」は傑作と評されていますが、まだ読んでいません。

別れることによって、どんどん力を備えられるという境地には至りませんでしたが、伊集院氏に対する個人的興味はまだ尽きないようです(笑)。
次は、「いねむり先生」で、今に至るルーツを探りたくなりました。

ちなみに、私は「理不尽」「非情」な別れからは、歩き出す力がまだあるとは感じられません。でも、年々、心優しい人に恵まれて、色んな場面で助けていただいているとは思っています。ハイ!日々、精進ですup

今日もポチっとしてねsun


にほんブログ村

明日のことは分からないので、取り敢えずケセラ・セラ!(ドリス・デイ)

« ちょっと息抜き!猫カフェ・レポ | トップページ | 近況ー忙しい3月に思うこと »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/581497/56847398

この記事へのトラックバック一覧です: 「別れる力」は大人の流儀か:

« ちょっと息抜き!猫カフェ・レポ | トップページ | 近況ー忙しい3月に思うこと »